ポムフード特別企画 オムライス純文学
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第一話 初デートと明太子オムライス

第一話
初デートと明太子オムライス

「僕あまりこういうお店にきたことがないんですよね。普段は学食ばっかりなので。なんか緊張しますね。あ、そんなこと言ったら余計緊張しますね。夏希ちゃんはよくここくるの・・・ですか。うん、確かに女性が多いもんね。多いですよね。僕ちょっと浮いてますね。大丈夫かな。」

達也は坊主頭の頂点から、爪の先まで緊張をみなぎらせて、一人会話を進行していた。
水を飲むことさえままならない少年のぎこちなさは、二人の初めてのデートに瑞々しいハリをもたらしていたが、
そんな相手をリラックスさせる余裕も経験もない夏希は、ただただ早くオムライスが運ばれてくるのを願うばかり。
うつむきながら、短すぎたワンピースの裾をテーブルの下で引っ張った。

「お待たせいたしました。とろろ明太子といろいろキノコのオムライスのSサイズとLサイズでございます。」
行き場のない緊張感を、店員の声が優しく破った。とろろ明太子といろいろキノコのオムライス。初デートでこの変わりダネメニューを頼むカップルは相当珍しいだろう。
明太子ソースから漂う磯の香りが、焼きたてのたまごの香りととけあって、嗅覚を直球で刺激した。達也の前に置かれたLサイズのオムライスを、夏希ははずかしそうに自分の分ととりかえ、口に運ぶ。
立ちのぼる湯気でほんのりと頬をしめらせた夏希は、ふっくらと幸せそうにオムライスをのみこんだ。その様子を、達也はちらちらと盗み見た。
「夏希ちゃん、あとでデザートも頼もうね。」
甘いものは苦手だが、気を利かせてみる。この和んだ空気をもっと長続きさせたかった。
坊主頭のガリガリ男子と、食欲旺盛のぽっちゃり女子。
磯の香りに包まれた初デートが、なんとも自分たちに似つかわしい気がして、二人は今日初めて、目を合わせて微笑み合った。
 
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